福山和人

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ふくふく家族

第33回夫の英語

夫は英語ができるようであやしい。
新婚旅行は城崎温泉一泊二日だったので6年後、司法試験に合格した時に10日ほどドイツの友人を訪ねてハンブルグに行った。
ドイツ人ばかりなので自然と英語が共通言語になってしまう。
夫も中学英語の基礎を頼りに果敢に会話に入っていた。
一見彼の会話力はすごい。
夫は若い頃から歌が好きで洋楽をよく聞いていた。
ビートルズはほとんど歌詞を覚えていて歌える。彼の発音はとてもいい。
だから彼が話すとドイツ人の友達はみな「あ、話せるんだな」と思ってバーっと早口の英語を浴びせかける。
夫は「あわわわわ」だ。
実際彼は歌はまるでネイティブのように歌えても意味は無視して歌っている。
だから自分の言いたいことは何とか片言で言えても相手の言うことはわからないのだが、だてに発音がいいから周りは容赦しない。

ドイツで彼は大変だった。
でも彼の会話力は度胸に支えられている。
あるとき京都でアメリカ人の友人を五山の送り火に案内したとき、彼は彼なりに送り火の説明をしていた。
「オボン カムズ、ダット マウンテン、デッドマン ウォーキンク、アンダスタンド、あ~は~?」
お盆にはあの山に祖先の霊が帰ってくると言いたいのだろうが、これでは死んだ男が山で歩いてることになる。
ゾンビじゃないんだよ。
何が「わかる?あ~は~?」だ。

しかしこの間違いをおそれない厚かましさは外国語のコミュニケーションには大事だ。
ビートルズの曲全部の歌詞を逐語訳で覚えたらかなり話せるようになると思うのだけど、彼には今そんな根気はないかもしれない。
彼にとって言葉は音。
たまにしか英語を使わないのに意味を理解するとか、そんなこと頑張れるか、歌は楽しく歌うもんじゃ~!と言いそうな気がする。

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