福山和人

福山和人

ふくふく家族

第15回日頃の尊い労働に感謝を込めて

「お父さん今日帰って来はる?」小学生の息子が聞く。
夫は昨日は丹後に「つなぐ京都」の仕事で泊りだったので、けっこう長いこと顔を見てないように思う。
ふだん、いてもそんなに長く顔を合わせる訳ではないが、やはり川の飛び石のように、それなりの間隔でいてもらわないとこちらの気持ちのバランスをキープできない。
たかが一晩でどうかなるような仲でもないが、やはり慣れたペースというものがある。
「今日は帰って来はるよ」

ところで、うちの夫はとぼけて面白い。
私が毎朝「今日は帰ってくる?」と聞くと、決まって仏頂面で「ワシはいつでも帰ってくるで!」と返す。
いやいや、「晩ご飯に」帰ってくるの?ご飯要るの?
私の関心事は晩ご飯をウシの干し草みたいにうづたかく積み上げなければいけないか否か。
帰ってくるのは知ってるよ。てか、どこに行くのよ?
一通りお決まりのやり取りをして、今夜の晩ご飯の支度開始時間の見当がつく。

夫は気を悪くするかも知れないが、やはり夫が外で食べて帰ってくる日は、気持ち的にラクだ。
四人家族だが、消費される食料のほとんどが夫の胃袋に収まる。
文字通り「寝食を忘れて」練り消しをこねたり、本を読んだりしてしまう子どもらの食べる量は知れている。四六時中「もっと食べろもっと食べろ」と言っているのに食は細い。
それが夫がいると、常にちょっとした宴会の感がある。
しかし、晩ご飯は彼にとってはほとんど唯一の食事だ。
朝は彼なりの「黄金率」の牛乳とヨーグルトだけ。昼はバタバタしてお菓子をつまむ程度。食べない日もある。だから晩ご飯はしっかり美味しく、そしてゆったり楽しく食べたいらしい。

だから、私がご飯にありつけるしあわせに感謝する気持ちを忘れぬように、毎月のお給料前の晩ご飯は「日頃の尊い労働に感謝を込めて給料日前、質素倹約ケチケチ夕飯デー」にしようかと提案すると、必ず速攻で「却下!」と返ってくる。
最初は終戦記念日にしようと提案したが難色を示され、毎月のお給料前となると即NGだった。
なによ、子どもの教育に大事なのよと思ったが、彼が一日ほとんど一食しかまともな食事をとっていないことを考えると、ここはその一見気の利いている提案も引っ込めざるを得なかった。
衣食住に足りているしあわせの有り難さは、また別の方法で子どもらに伝えていきたい。

「とか言って、どうせキミが手ぇ抜きたいだけちゃうの」いやいや、そんなことないっす。
一度思い付いて終戦記念日のお昼ご飯に雑炊を作ってみて、これは夫の労働に感謝すべく、毎月のイベントにしようかと思ったのさ。
そう言うと夫は「別に俺に感謝してくれんでええから、ちゃんと食わしてくれ」そう言って、サンマの塩焼きをほじほじしていた。

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