福山和人

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ふくふく家族

第23回呪われた館

おしゃれなカフェには夫とは入ったことがないような気がする。
昔子どもが生まれる前に一度、カフェではないが、「普段と違う雰囲気のところに行ってみよう」という趣旨で「呪われた館」に行ったことがある。
普段というのは王将や天一やそこらへんのファミレス、千成食堂だ。
もちろん「呪われた館」とは夫の命名で、本当はたぶんフランス語か何かのおしゃれな名前の店だった。

そこは外観は白いお城のような建物で、蔦が生い茂り、店の中は至るところにポプリ、ドライフラワー、アロマグッズ、レースにリボンにオーガンジーというものがところ狭しとしかし某かの拘りをもって配置されていて、文字通り香り立ち、壮絶なまでに麗しい場所だった。
私たちはたじろいだ。
そこで夫は私に耳打ちした。
「こんなとこで屁もこけへんのぅ」
ポプリもオーガンジーも私の趣味ではないのだが、夫などは最もその場に似つかわしくない人物であることは間違いなかった。
以来、そのシュールなまでに麗しさと芳しさにこだわったその店は私たちの間では「呪われた館」と呼ばれ、若かった頃の数少ないデートの思い出として私の脳裏によみがえってくる。

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