福山和人

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ふくふく家族

第38回大根の分厚さ

「お母さんは家にいるお母さんやけど、アンタらもちゃんと家事できる人にならなあかんで。男も女も。それが平和に繋がるんやで」と子どもに説く。

実際、ふだんはうちは外で稼ぐ夫と一応家を回す私と分業しているが、夫が家事全般できるおかげでいろいろなときに困らない。
私が動けなくなったときとか。
余計なストレスから来るつまらないケンカをしない。

でも逆に彼がだてに「料理人」であるがゆえぶつかることもある。
それは例えば味噌汁の具の切り方。
私は子どもの宿題やなんやかんやとやりながら夕御飯を作る。
予定外の要請も入る。
「お母さん!箱とペットボトルの蓋ちょうだい!」
「お母さん!このプリント書いといて!」
「お母さん!見て!」

そんな中でやっているので味噌汁の大根なんか手元も見ないでガガガっと切って鍋にボチャン!なのだが、後で夫が味噌汁を食べるとき、不服そうな顔をして言う。
「ちょっとこの大根分厚すぎるやろ」こっちは「何をつまらぬことを」と思うのだが夫とはそこの価値観は共有できない。
私には十分「切れている」しかしやはり料理によって歯応えや味の染み方などいろいろあって切り方の流儀があるらしい。
私もそれは頭でわかる がなかなか実践に反映できず、何度かこんなつまらぬことでぶつかった。
「まだ分厚い。なんでこんなことできひんねん!わざとか!」
などと言われ頭に来て、次に味噌汁を作るときは急いでいたから
「ええい、面倒だ」と、スライサーでシャシャシャシャシャーとスライスしてやった。
どうだ。さすがに今度は薄いやろ。ふん!

果たしてその晩彼は遅く帰宅して味噌汁を食べたが特に何も言わなかった。
実は味噌汁の大根はスライスしてはいけない。
ぐにょぐにょで歯応えは悪く、やはり不思議と味もよくない。
悔しいけど具の切り方は大事なのだ。
でも何も言わずに寝てしまった夫は大根の歯応えもわからないほど疲れていたらしい。
後で「この前の大根、スライサーで削ったんわからんかった?」と言うと「は?なんのこと?」と言っていた。
彼がくたびれていたおかげでキューバ危機が避けられた晩だった。

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