福山和人

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ふくふく家族

第5回新婚生活の思い出

新婚生活を始めたのは築何十年かわからない、吹けば飛ぶような木造二階建てのアパート。右京区だった。
お隣の声はよく聞こえたし、台所の床はたわむ。手乗り文鳥のかごを置いていた玄関のドアは破けていて、風が入って鳥が可愛そうだからビニールをテープで貼っていた。
一度お風呂の引き戸が開かずに閉じ込められ、部屋にいた夫に救出してもらったこともある。お風呂は夫が背中を洗うと左右の壁で肘をしたたかに打っていた。
司法試験受験生でアルバイトの宿直をしている彼と、いろいろな所で英語を教えたり副業でイラストを描いたりしていた私の「非正規」カップル。自ずと住める場所は限られていた。
けして余裕があるとは言えない新婚生活で新婚旅行は一泊二日の城崎温泉カニツアー。
安い宿でカニを食べる。熱燗を飲みながらカニ味噌をなめる。誠実にカニを食べるとなると食事は終始無言。カニとのバトルだ。新婚旅行にしては無口な宴だ。行ったと思ったら帰ってきた旅行だったけど、もちろんアツアツだし楽しかった。

アパートの二年後の更新時に阪神淡路大震災が起きた。
次に揺れたらアパートは間違いなく潰れると思い、急いで少し安全そうなところに引っ越した。今度は鉄筋入りの二階建てハイツだった。私のアルバイトも増えて、少し高くなった家賃も払えたのだ。
そこで、合格し左京区に移るまでの数年を過ごした。
そこは長屋のようなハイツで、小さい子がたくさんいて、一階の一室に「みんなのおばあちゃん」が住んでいた。
八十歳ぐらいか?一人で日なたぼっこしているようなおばあちゃんで、私もよくおばあちゃんの部屋に遊びに行って一緒にお茶を飲んだ。
私には子どもがいなかったので、昼間バイトがなくて寂しくなるとおばあちゃんのところでのんびりしていた。
夫は大学で勉強していたし、受験生なのであまり出掛けることもなかった。
「長屋」のみんなは仲がよく、今思えばラッキーだった。
夫は相変わらず宿直のアルバイトで泊まりの夜があり、入れ違いで会わないときはメモ書きでメッセージをやり取りしていた。

私の新婚生活は豊かではなかったけれど、右京区の太秦や広沢といういいところでただ楽しいばかりの時間だった。
友達もたくさんいて、楽しかった当時のことを今も懐かしく思い出す。
若かったなぁ!子どもができたのは結婚して十年目。
二人の時間は楽しく、あっという間に過ぎた気がする。

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